たじまの一日十句




2009年7月28日

向日葵の軽さへ落ちてゆく気配
花火消えて軽さばかりの星また星
釣堀に軽さを抱いている横顔
かるがると立ち上がり風金魚売り
避暑地から軽い家族の成り立ちあり
軽く言うねと雑然とところてん
白玉のかるささびしき異邦人
ふいに蜜豆かるくなりゆく色情
式つつがなく未だ西日はかるく
繭かるく青年のひたい輝く


2009年7月27日

海月ゆくどこか明るい私服来て
かるがると私服あしかさねて夕焼
夕立や私服しっかりくっきり立つ
水無月や私服よごして屋根直す
私服ふわ胸のあたりを堕ちる瀧
冷素麺私服をはしりすぎてゆく
噴水感性もてあましてや私服の手
穴あるよ夏空ばかりみて私服
太陽をさえぎって立つ私服かな
ひとりずつ私服を消して踊るなり


2009年7月26日

極暑あつまれば盗賊なまえがある
パイナップル感じれば軽い盗賊
腰に手をあて盗賊はあさがおの色
盗賊の道のぼやけて向日葵咲く
天道虫とぶ盗賊の腕時計
盗賊の白い自転車はなばたけ
盗賊の即答みちみち花たちばな
夏のはな盗賊洗髪たちまち咲く
まなざしの盗賊ふかいふかい泉
滝のうえから盗賊の旅はじまる


2009年7月25日

昼寝してあり便利な手便利な足
風浪のかなたくずれている昼寝
昼寝くるしみの小さな窓ひらく
あざやかな風のっかっている昼寝
音がくる昼寝こえてはならぬ線
箱降ろす明るいみなと風の昼寝
あめふりの昼寝の出口あさぎいろ
誰が誰の昼寝のじかん見つめている
昼寝して体のかたきところ浮く
訳文の昼寝どこより知り始め


2009年7月24日

比喩の鰻しずかな男子たちがいる
うなぎの美どこまでも明るき健康
朝礼やいたるところに鰻の目
突然の鰻ことばになりたがる
鰻非礼ゆっくりと幸せになれ
憲法のなかを鰻の横たわり
鰻にぎる一瞬水を蒔くかたち
家の根に鰻ちいさくない不安
メモ帳の鰻しずんでいるごとし
透明の鰻とわたしたちの声


2009年7月23日

紫陽花を切れば駅ばらばらになる
紫陽花のうしろ回転する遊具
携帯電話ひらけば窓になる紫陽花
紫陽花をほしがっている言葉の壷
工具ちらばる低い地球から紫陽花
誰にでもある紫陽花のようなおわり
だってしあわせ紫陽花もその母も
紫陽花の興奮あおく常に宙
近眼の犬のきている濃紫陽花
遠方の紫陽花を絵に増やしけり


2009年7月22日

向日葵がつぎに繋がる空気の手
声が紙ふぶき向日葵の通りみち
モデルハウスに活きている向日葵が
向日葵がどきどき草になる嬉しい
向日葵や彼は眼鏡をかけて去る
向日葵は神経よ水のくさわけ
鍵をのどかに向日葵のある日差し
向日葵のひだりひみつの飛行場
向日葵がにこにこ目的地が真っ赤
ドアが在る向日葵が出てゆきたがる


2009年7月21日

白鷺がなにか理論の山充実
常識の砂のトラックから白鷺
公園に森くっついて白鷺待つ
白鷺や人に光速の口のくらさ
手と心たおやかに鈴の白鷺
にんげんに手首あります陽の白鷺
絶対がしらさぎ炊き立ての白さ
拳つくれば斜面があって白鷺翔つ
雨の降る予報白鷺に砂のじかん
柴犬がきて白鷺を飛ばしけり


2009年7月20日

河鹿啼く家路が旅路うきあがる
透明な疲れ河鹿のうずまく闇
水のロシア河鹿ゆっくりうつり棲む
コードレステレフォンの底から河鹿
繋がっていない気のする河鹿かな
咲くよりも河鹿ちいさな小部屋かな
こもれびのように河鹿や遠くの樹
年上のひとの偶然なる河鹿
河鹿鳴く誰にも見えぬ小学校
音楽室に音楽のある河鹿かな


2009年7月19日

息をしている飛魚の小さな眼
鼻すじの照る親戚一同とびうお
飛魚の夢にちいさな太陽あり
飛魚のながい実家や風とおる
櫛風沐雨あかるいあかるい飛魚たれ
実録の飛魚ひとつずつ翳る
飛魚や言語社会は路地重いよ
飛魚の深いところが咲いている
大陸や深夜FM波乗る繭
西瓜通信衛星のこどもたち





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