ロータリートランペットは別名横ラッパと呼ばれ、ドイツやオーストリアのオーケストラで用いられています。使う楽曲(作曲家)もモーツアルト、ベートーベン、マーラー、ブラームス等の音楽が中心になっています。吹奏楽やJAZZで使う事はまず無い楽器です。
先日、ドイツ人の牧師さんに嫁いだ義妹一家が帰省していたのですが、義弟のマイケル(ドイツ読みではミハエルになるでしょうか?)が「兄さん、私もドイツで少しトランペットを吹いています。けど形が違うよ!」と言いました。彼は教会で賛美歌のコラール隊で献上演奏をする程度の活動らしいですが、ドイツではみんな横ラッパを吹いているとの事。
けど横ラッパって高いんですよ。理由は独特のロータリーシステムの製造工程が難しい事と、一部地域でしか製造していない楽器で、且つ殆どが職人さんのハンドメイドなので製造数が少ない事にあるようです。
その特徴は、ロータリーバルブは音程を替える時に、非常に小さなストロークで替える事が出来るので、スラーやレガートが美しく出来る事、更にマウスピースは比較的深い目のものを使用するので、音質が温かく上品な事が利点です。但し高音の音程に難が有る場合が多く、吹きにくいという声も聞きます。
ウィーンフィルにて長年主席で活躍されたハンス・ガンシュさんは、勿論横ラッパ吹きですが、横ラッパでJAZZフレーズまでこなす名手です。しかしこんな名手はそうは居ませんね。
SHUNも昔東欧製のチェルベニーというメーカーの横ラッパを持っていました。値段の割りに鳴りは良いのですが、ロータリーが直ぐに固着してしまい、手入れが難しいので手放してしまいました。今はMAX ENDERSさんが製作した90歳近いラッパを整備(3番トリガー、唾抜きを追加、マウスパイプを特注して)使っています。
クラシック音楽は世界全体から見ればイタリアで発展してきたという見方が強いですが、日本では世界大戦の友好国であったドイツの影響が色濃いですね。しかし音楽用語の多くはイタリア語で、ドレミファもフォルテもピアノもダカーポもダルセーニョ、アンダンテ、ビバーチェと言った音楽用語もそうです。ローマに行った時にバス停をフェルマータというのにはびっくりしましたが。
その影響で、日本の音楽教育では、音楽の父はハイドン、母はヘンデル、楽聖ベートーベンに天才モーツアルトとドイツ&オーストリアの方々が、如何にもクラシック音楽を発展させてきたかのようなイメージですが、ベルディやロッシーニといったイタリアの音楽家も実は大きな影響を現代に残しているのですね。
SHUNも横ラッパが欲しいのは欲しいのですが、オーケストラの全体がロータリーで吹かないと、一人だけロータリーで吹いても音質が浮いて(沈んで)しまうので大変です。
友人が沢山いる「オーケストラ千里山」では、トランペットパートは無理して、世界的な名器といわれるモンケで揃えたそうです。(ロータリーの系譜にはヘッケルとモンケという二つの潮流があるそうです。)しかし指揮者のSHUNの後輩のM君の毒舌では「モンケに替えてもあんまり音が変わってないけど」)『ごめん!』
SHUNも縦ラッパを沢山持っていて、その1台1台の個性を尊重していますが、自分が思うほど音質は周囲にはわからないようです。
ある意味、音質や吹奏感は「自己満足」の域にあると思います。
縦ラッパでも九州交響楽団のようにMonette吹きが中心のオーケストラもありますし、シエナウィンドオーケストラのようにBach吹きが中心の楽団も有ります。
音色を合わせる(アンサンブル)という意味では、出来るだけ同じメーカーの楽器で奏でるのが望ましいと思いますが、やんちゃで個性的なラッパ吹きはなかなか同じ色に染まることが出来ないようで。(チャンチャン!!)