らくらくISO9001講座


口語訳 ISO13485:2003

前書き
序文
1.適用範囲
2.引用規格
3.用語の定義

改訂 2004.10.01

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宇野 通  

本記事のタイトルは口語訳ですが、内容は翻訳ではなく解釈の1例です
規格への適合性は原文や対訳版で判断して下さい


前書き・序文・1〜3章


表題
医療機器のための品質マネジメントシステム−
法規制として採用されることを意図した共通ルール




前書き
◆ISO13485の作成者
  国際規格ISO13485は、国際標準化機構(ISO)の「医療機器の品質管理と関連する一般事項」技
  術専門委員会(委員会の番号 ISO/TC210)が作った。

◆1996年版の廃止/ISO13488の廃止
  ISO13485第2版(2003年版)の発行により、ISO13485第1版(1996年版)を廃止する。また同時に、
  ISO13488(1996年版)を廃止し、ISO13485に統合する。
  これまでにISO13488(1996年版)を使ってきた会社は、今後はこのISO13485(2003年版)を使うこ
  と。この際、自社に該当しない部分については、この規格の1.2のルールに従って除外して使うこと。

◆表題の変更
  2003年版は、1996年版のタイトル「品質システム」から、「品質マネジメントシステム」にタイトルを
  変えた。そして、次のような内容について書いてある。
   ・製品の品質保証(製品について信頼を得ること)
   ・顧客との約束を果たすこと
   ・品質に関わる会社の色々な仕組み【品質システムのマネジメント】

※ 前書きの冒頭のISO規格定型部分は省略しました




序文

0.1 適用

◆ISO13485の対象分野
  ISO13485は、医療機器の分野を対象に、品質に関する会社の運営方法【品質マネジメントシステ
  ム】を決めている。ISO13485は、次の分野を対象にする。
   ・医療機器の製造
   ・医療機器の設計・開発
   ・医療機器の設置【据付け】
   ・これらに伴うアフターサービス(保守、点検、保証など)【付帯サービス】
   ・医療機器に関係したサービス(レンタル、保守、修理、販売、物流など)
   ・医療機器に関係したサービスの企画【設計・開発】

◆ISO13485の使用者
  ISO13485は、会社の実力を評価するために使う(顧客との約束を守れる実力、法令通りに実施で
  きる実力)。これには、次の2つの場合がある。
   ・会社が自分の実力を評価する
   ・外部の機関(規制当局、顧客、審査登録機関など)が会社の実力を評価する

◆参考の扱い
  ISO13485の中で「参考」とあるのは、この規格の理解を助けるための補足説明だ。本文の詳細な説
  明の場合と、参考情報の場合がある。参考情報の場合は実施を強制しない。

◆製品について決めるのではない
  ISO13485は、製品の具体的な管理内容(性能、製造方法、検査方法など)を決めているのではな
  い。個々の製品の管理内容は決まっているという前提で、その決められた内容を確実に実行するた
  めの仕組みについて書いている。

◆経営戦略としての採用
  ISO13485は経営の考え方について書いてある。ISO13485を導入するかどうかは、会社の「経営戦
  略」 として決めるべきだ。

◆同じ仕組みを求めるのではない
  経営の仕組みは、会社の規模や組織、考え方、製品の種類、製造方法、顧客の要望などにより異
  なる。ISO13485は、全ての会社に対して、共通の仕組みや共通の文書を当てはめようとは考えてい
  ない。ISO13485が決めるのは原則だけなので、具体的な方法は各々の会社で決めることだ。

◆特別ルール
  危険度の高い医療機器については、通常よりも厳しい管理が必要だ。そこで、ISO13485の中にも、
  特定の医療機器だけを対象とした項目を作った。これを「特別ルール」【特別要求事項】と呼ぶ。
  ISO13485の中で「特別ルール」を作った医療機器は次のものだ(それぞれの医療機器の定義は3
  章にある)。
   ・埋め込み医療機器(7.5.3.2.2 8.2.4.2)
   ・能動埋め込み医療機器(7.5.3.2.2 8.2.4.2)
   ・滅菌医療機器(7.5.1.3 7.5.2.2)

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0.2 プロセスアプローチ

ISO13485は、「プロセスアプローチ」の考え方を取り入れて作った。

◆プロセスとは
  会社の活動は、いくつもの仕事(の単位)が集まって出来ている。この一つ一つの仕事(の単位)が
  「プロセス」だ。それぞれのプロセスについてみれば、
   ・インプット (部品、原料、中間製品、仕事のやり方、必要な情報)
   ・アウトプット(仕事の成果、情報、製品)
  がある。ISO9000:2000(用語の定義)では、インプットを受けて、アウトプットを生み出す活動が「プロ
  セス」だと定義している。

◆プロセスのつながり
  会社の仕組みがうまく機能するように、一つ一つの仕事【プロセス】をしっかり管理すること。
  あるプロセスのアウトプットが、次のプロセスのインプットになるというように、仕事が繋がっている。
  プロセスの繋がりが、会社の全体の仕組み【システム】を作っている。

◆プロセスアプローチとは
  プロセスアプローチとは次のような方法(考え方)だ。
   ・仕事を区分し、いくつもの仕事の単位【プロセス】に分ける
   ・その仕事(の単位)【プロセス】の繋がり方【相互関係】を理解する
   ・これを踏まえて一つ一つの仕事(の単位)【プロセス】を管理する
   ・繋がっている仕事の全体を一つのシステムとして意識する



0.3 他の規格のとの関係

0.3.1 ISO9001との関係
ISO13485は、独立した規格だが、内容はISO9001をベースに作った。
ISO13485の原本では、ISO9001と同じ部分は通常の字体で、ISO9001と異なる部分はイタリック体で記し た(ISOが販売する電子版では、さらに青字になっている)。ISO9001との比較については、付属書Bに対照 表を載せた。


0.3.2 ISO/TR14969
ISO13485の使用ガイドブックとしてISO/TR14969(TRは技術報告のこと)がある(実際にはまだ作成中)



0.4 他の経営システムとの組み合わせ

◆ISO9001との関係
  ISO13485は、ISO9001と合わせて使うことができるように、同じ章立てにした。

◆他の経営の仕組みとの組み合わせ
  ISO13485の中では、品質以外の経営の仕組み(環境、労働安全や衛生、財務に関わる仕組みな
  ど)について触れていない。
  しかし、実際の会社の活動の中では、様々な経営活動を切り分けることはない。そこで、ISO13485は
  他の仕組みと合わせやすいように配慮している。会社がISO13485に従った仕組みを作る際に、既に
  動いている他の仕組みと共通する部分があれば、それを利用することも可能だ。

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1章 適用範囲

1.1 ISO13485導入の目的

◆ISO13485導入の効果
  ISO13485を取り入れると、次の点について、会社の実力を証明できる。
   ・顧客と約束した通りの製品(またはサービス)を提供できる
   ・法令に合った製品(またはサービス)を提供できる

◆ISO9001との違い
  ISO13485は、医療機器に関して、会社の仕組み【品質マネジメントシステム】と、法令とが、うまく調
  和できるように作った。そのために、ISO9001に医療機器に必要な内容を追加した。
  一方では、ISO9001から"法令上の決まりとしてふさわしくない部分"(「継続的改善」と「顧客満足の
  向上」)を除いた。だから、ISO13485に合っていても、ISO9001に合っているとは言えない。



1.2 ISO13485の使用の条件

◆ISO13485を使う会社
  ISO13485は、全ての医療機器を製造(あるいはその周辺のサービスを実施)する会社を想定して作
  った。どのような形(会社、法人)や大きさの組織でも使える。

◆除外
  もし、法令で認めているならば、ISO13485の中から7.3項(設計・開発)を除いて使っても良い(それで
  も、ISO13485に合っていると認める)。これは、会社が、実際にその製品の設計・開発を行っている
  かどうかに関わらず当てはまる。
  国によっては、7.3項(設計・開発)を除くかわりに、別の決まりを作っているかもしれない。このような
  決まりがあれば、守ること(守っていなければ、ISO13485に合っているとは認めない)。

◆不適用
  ISO13485の中に、仕事の性格上、全く実施していない項目があれば、その項目を除いて(不適用と
  して)ISO13485を使うことができる(それでも、ISO13485に合っていると認める)。ただし、不適用に
  でるきのは7章の項目だけだ。
  なお、上記の法令による除外とは関係なく、会社が設計・開発を行っていないならば、7.3項(設計・
  開発)を不適用とすることができる。

◆アウトソースの除外禁止
  製品にとって必要な項目は、外注委託【アウトソース】しているからといって、責任を免れない。外注
  委託している工程や作業についても、仕組みの中に入れること。

◆「適切な場合」の意味                              <文書または記録>
  ISO13485の中で、「適切ならば」(if appropriate またはwhere appropriate)と書かれている項目は、
  該当しない理由や、他の方法で実施できることの証拠を、文書や記録で示さなければ除外を認めな
  い。もし、それが
    ・製品について、顧客との約束や法令上の決まりを守るために必要
    ・トラブルの再発防止【是正処置】の手段として必要
  であれば、除外はできない。
  該当する項目は、以下の通り
    4.2.1   医療機器の設置【据付け】とアフターサービス【付帯サービス】について定める文書
    6.4 d)   汚染物の管理
    7.5.1.2.2 医療機器の設置【据付け活動】の文書化された手順

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2章 引用規格
ISO13485は次の3章で、ISO9000:2000(JIS Q 9000:2000)の規格の中の「3.言葉の定義」を使用して
いる。ただし、対象はあくまで2000年版であって、改訂版は含まない。




3章 用語の定義
◆ISO13485で使う言葉は、ISO9000の「3.言葉の定義」と、以下の項目で定義する。

◆組織・顧客・供給者
  2003年版では、製品の取引に関わる当事者の呼び方を次のように変更した。
  2003年版  供給者      組織    顧客
  1996年版  下請負契約者 供給者   顧客

  ※この口語訳では、以下のように表現する。
    「取引業者」 「会社」 「顧客」

◆「製品」の意味
  ISO13485で「製品(product)」と言う場合には、「サービス」(無形の製品)を含む。
  さらにISO13485では「医療機器」と言う場合にも、「(医療機器に関連した)サービス」を含む。

ISO13485固有の用語の定義
  以下に、ISO13485で特有の用語について定義する。ただし、各国の法令上の定義と異なる時は、
  法令が優先する(だから、ここの定義には特殊な内容のものはなく、一般的な使い方を書いた)

※記載順を変更しています(原文は、アルファベット順)
3.7 医療機器

 ◆体内や体表で直接に薬として働くものではないが(薬理学的に、免疫の効果で、または代謝によっ
   て機能するものではないが)、そのような活動の補助をするもの。

 ◆次のような種類がある(器具や機械だけでなく、薬剤や材料を含んでいる)。
   ・器具・道具(instrument、apparatus、implement)
   ・機械・装置(machine、appliance)
   ・埋め込み用具・埋め込み機器(implant)
   ・体外診断薬(in vitro reagent)
   ・検定物質・基準物質(calibrator)
   ・ソフトウェア(software)
   ・材料(material)
   ・その他関連する物質や物(article)

 ◆"人体への使用"を意図している。"人体への使用"とは、以下の目的で使うことをいう。
   これには、単独で使う場合も、組み合わせて使う場合もある。
   ・疾病の診断、予防、検査、治療、緩和措置
   ・負傷の診断、検査、治療、緩和措置、修復
   ・検査(運動機能、体内の状態の検査)
   ・代替(義歯、義眼など)
   ・修復(整形医療)
   ・生命維持
   ・受胎調整
   ・医療機器の殺菌
   ・体外診断、人体から取り出した検体による検査

参考 「医療機器」の定義について
    この医療機器の定義は、グローバル整合会議(GHTF 医療機器の管理システムの国際的な整
    合をめざす、各国代表の集まり)で決められた。
 ※ ただし、この口語訳は、大きく書き換えて原型を留めていないので、GHTFの定義とは言い難い。
3.5 埋め込み医療機器(医療器具)
  
  医療機器(医療器具)で、
  1) 医療処置により、その全体や一部を体に埋め込むもの。あるいは、医療処置により、開口部に
     挿入するもの。
  2) 人工皮膚や人工角膜

  ただし、30日以上体内に留める(ことを想定した)もの。
  除去する際にも、医療技術を必要とするもの
 
参考 能動埋め込み医療機器は、別に分類するのでここでは除く
3.2 能動医療機器

  電気またはその他の動力で動く医療機器。人の力で動くものや、重力を利用したものは含めない。
3.1 能動埋め込み医療機器

  能動医療機器で、その全体や一部を、医療処置により体に埋め込むもの。あるいは、医療処置によ
  り、開口部に挿入するもの。ただし、処置の間だけ埋め込むものは除き、長期にわたって使うものを
  言う。
3.8 滅菌医療機器

  滅菌が必要な医療機器。

参考 滅菌が必要な医療機器は、各国の法令で決められている
3.6 ラベリング

  医療機器につける表示(文章、図、デザイン)で、次の内容のもの。
   ・医療機器の名称、品番、ロット番号など
   ・技術的な表示や説明
   ・使い方の説明
   (納品書などの、出荷用の伝票や表示は含めない)
  表示の方法としては
   ・機器本体、容器、包装(パッケージ)などに記載する
   ・機器本体、容器、包装(パッケージ)などに貼り付ける(いわゆる製品ラベル)
   ・説明書として添付する
  
参考 国によっては(法令で)「製造業者が提供する情報」と呼ぶ。
3.4 顧客の苦情

  販売した医療機器の問題点が、文書や、インターネットや、口頭で伝えられること。問題点には、次
  のようなものがある
   ・表示が違っている・分からない【識別】
   ・約束と違う【品質】
   ・壊れた・劣化した【耐久性】
   ・故障した【信頼性】
   ・危ない・事故があった【安全性】
   ・使用した結果が良くない【性能(performance)】
3.3 通知書

  医療機器を販売・譲渡した後、会社から使用者に連絡するための文書。次のような内容を記載する。
  1)追加情報
  2)医療機器の取扱いに関する説明
    ・使用について
    ・改造について
    ・製造元・販売元への返却について
    ・廃却について

参考 法令で通知書の発行が義務付けられることがある

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